星空スペース

【12/16-3/25】夷隅地域の戦国城郭展@いすみ市郷土資料館


毎度どうも、星空スペース店長です。

今、いすみ市郷土資料館で開催中の、『夷隅地域の戦国城郭展』に行ってまいりました。

地政学の観点からもなかなか面白い展示会でした。

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地政学(Geo-politics)というのは、広義には歴史学と政治学と地理学と軍事学が組み合わさったような学問なのですが、一般的に使われているのは、歴史的事件がなぜその地域で展開されたのか、あるいは時の権力者や軍隊がどうしてそのように活動したのかを地図の上から考えるようなことをさします。

比較的近年に学問体系化された学問ジャンルで、日本ではまだまだあんまり認知されていない感じですね。(これはヨーロッパ大陸系のヘゲモニー論争と関連していることもあります。)

たとえば戦国時代なんかをみても、日本の歴史家や歴史愛好家の圧倒的多くは、政治的事象や戦国武将たちのキャラクター性から、戦国時代を理解しようとするのが圧倒的です。

これに対して、地政学の議論の出発は地理的な風土と歴史的な文化背景を元に歴史的事象を観察し、議論のゴールとしてある歴史的事象のストーリー的な結末を地理的要素や軍事的要因から科学的に説明することを好みます。まあ、古代中国の兵法なんかも地政学の一種といえば一種なんでしょうけど、それをもっと高度に科学的説明として根拠付けるところが地政学の特徴でしょう。

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戦国時代の房総半島は、大別すると後北条氏方、里見氏方の2大勢力とそれ以外の日和見勢力という3つの勢力に分かれていました。

それ以外の日和見勢力の代表例が、ここいすみ市を拠点とした土岐(とき)氏。そして、中房総に拠点を置いた武田氏です。

ちょうど、両者とも北条氏と里見氏の2大勢力にはさまれていた歴史的経緯があります。

外房を縦に南下してもらうとわかるんですが、夷隅地域から先というのは山が深くなります。大軍を展開しやすい平坦な夷隅地域と防衛のしやすい山地との境界線に、ちょうどいすみ市は位置していました。

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そして、いすみ市を横断するのが夷隅川。

この川は房総どころか関東八州でももっとも厄介かつ危険な川です。軍事上、二つの大きな特徴あります。

一つ目は非常にクネクネ折曲がった蛇行川で、しかも流水量が多く氾濫しやすいこと。

そして、二つ目は川の水深が深く自然の水掘の役割を果たすことです。

つまりは、房総を外房側から北上・南下のどちらにしても、この夷隅川があることによって、夷隅地域を押さえておかなくては、大軍の行軍や兵站に大きく影響してしまう軍事的要衝なのでした。だからこそ、この夷隅地域は戦国時代の房総でもっとも重要な地理的拠点となったのです。

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そして、そのいすみ市を手中においていたのが、なぞの豪族土岐氏です。土岐氏の城の中心が地図中央の万喜城なのですね。万喜城は、星空の家から車で15分ほどいったところにあります。

土岐氏といえば、国司から続く名流ですが、なぜ中央豪族の土岐氏がこの外房地域に流れて拠点を張ったかはまだはっきりわかっていないようです。

ちなみに、土岐氏のもつ大きな城として、万喜城、鶴ヶ城、そして「へひうかの城」というのが記録されているのですが、この「へひうかの城」はその位置が判明していません。南北を強敵に挟まれていた夷隅地域ですから、軍事学的に考えて、大原の夷隅川河口の南あたりに土岐氏の最大の城があったんじゃないかと思うんですが、完全に謎に包まれています。これはけっこうロマンのあることです。

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展示会では、ちょくちょくこのようなQ&Aが貼ってあって、勉強になりました。

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Q13では、土岐氏の勢力範囲を推定されています。

文中、「万喜城を拠点に」という言葉が出てきますが、万喜城は典型的な砦城で沿岸の防衛はしやすくとも、大軍の展開に不向きです。僕の考えでは、土岐氏は万喜城はあくまで支城で、土岐氏は万喜城以上に大きな城をあと1つか2つ持っていたんじゃないかと考えています(上記「へひうかのしろ」がそれだったんではないかな~)。

もしくは同盟勢力があったか、という線も有力です。まあ、この辺は今後の研究テーマですね。

 

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資料館には、万喜城のジオラマも常時展示されています。平野に浮き上がった丘を要塞化しているのがよくわかります。

 

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戦国時代の山城に関する説明も丁寧なものがありました。城も一度勉強しだすと止まらなくなりますよ。

とまあ、このように、戦国時代の夷隅地域の様子を地政学的にとらえられるよい機会でした。

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ついついこんな本も買ってしまいました(笑)。少しずつ、星空の夷隅史料も充実しだしてきています。

こちらの展示会は3月25日まで開催されています。

展示会について詳しくはこちらのページをご覧ください。