こんにちは、星空スペース店長です。
最近、良く読んでいるコラム的なもののひとつに、上記の大多喜町地域おこし協力隊による「大多喜町若者100人インタビュー」というフェースブック上の連載があります。
いすみ市にもたくさん隊員がいらっしゃるこの「地域おこし協力隊」という制度、今年の10月からお隣の大多喜町でも隊員の方が1人着任されました。
それが、この大多喜町若者100人インタビューで写真と文章を上げているのぎさんという方です。
話はそれるんですが、いつもひらがなで「のぎさん」なので、私はてっきり乃木稀介の「のぎ」さんなのかと思っていたら、「能城」と書いて「のぎ」さんでした。珍しい苗字かと思いきや、何気に千葉県には多い苗字なんですよね。和歌山と千葉に多いのぎさん、もし和歌山県の能城村とつながっているとしたら、またひとつ和歌山と千葉のつながりの強さを感じさせる要素です。
はいはいその話は置いておいて、
それでこの大多喜町若者100人インタビュー、ひとつ面白い特徴なのが、インタビューされる人が原則大多喜町にずっと住み続けている人か、もしくは大多喜町に戻ってきたいわゆるUターン組の人たちという「縛り」があることなんですね。
その人たちを、移住者で半官半民間的な立場の地域おこし協力隊ののぎさんがインタビューしてレポートを上げていく。しかもなかなかインタビューが良いポイントをついていて、ちょっと地元っこでは聞きづらい点についても丁寧にご質問されているように感じます。
そして、どのインタビューにも共通しているのが、住み続けている人と戻ってきた人たちの「なんだかんだ大多喜町が好き」という思いの強さ。
読んでいてしみじみと、「郷愁」が人間に作用する影響力を思わずにはいられません。
一方で、私たち夫婦は別地域からのいすみ市への移住組で、こういう移住の仕方はいわゆるIターン組と呼ばれますが、移住というとどうしても私たちのようなパターンの方が脚光を浴びがちだなあと感じることがままあります。
私たちが運営している古民家シェアハウス星空の家は今までに10人以上の人々が暮らしてきましたが、そのほとんどすべてが域外からの移住者で、そういった珍しさもあって、テレビや雑誌などのメディアにも盛んに取り上げられたりもしました。
しかし、こと「思いの強さ」という人間の局面だけ切ってみると、自治体の移住政策としてまず進めるべきは「故郷に戻りたい」「古里に帰りたい」Uターン組の人たちをなんとかすることではないかと思ったりもします。
この辺り、いなかを二つの面から見て
「戻りたい・帰りたい田舎」をつくるのか
「行ってみたい田舎」をつくるのか
自治体の移住政策として、真剣に考えてみる必要があるんじゃないかと思います。
「行ってみたい田舎」はいわば演出の世界です。
いかに、域外の人にとって魅力を感じてもらえるように町を見せるか、そういったところに自治体は頭を使ってしまいがちです。
綺麗な里山、見ほれる自然、美味しい食べ物、温かい人情
そういったものを外の人が「いいなあ」と感じるように“演出”するのが、移住政策だと思ってしまっているようなことって無いでしょうか?
しかし、「戻りたい・帰りたい田舎」はとても“演出”ではごまかせないもっとリアルでシビアないなかの現実と戦わなくては、とてもつくりだすことはできません。
戻りたいのに戻れない、帰りたいのに帰れない人々の事情はさまざまですが、しかし、その多くの問題の根幹に、いなかが寂れてしまっている原因が潜んでいる気がしています。
だからこそ、簡単に問題が解決できない。その顕著な例が仕事であったり、学校であったり、病院であったり。。。
自治体行政がなかなか直視できない問題から目をそらすために、あえて「戻りたい・帰りたい田舎」を無視し、「行ってみたい田舎」を演出せざるを得ないとしたら、これはとても切ない話であります。
結局のところ、「行ってみたい田舎」とは流入人口を増やすという話です。
「流入」とはうまい表現だなあと思いますが、これは要するにフロー(流れるもの)として人の流れを捉えています。
一方で、「戻りたい・帰りたい田舎」の理想像は住み続ける人口を増やす・そこで一生を終える人の数を増やすことです。
これは「定住」であり、「定める」という文字からもわかるように、これは人間を地域のストック(たくわえ)としてみている。
フローとストック、どっちのほうが大事ということは無く、両方大事です。
話の流れからフローよりもストックのほうが大事と思われてしまうかも知れませんが、フロー(流入人口)を増やすことももちろん大事なことなんです。
しかし、逆に、流入人口が、何年かしたら流出人口になっていたなんて事態になれば、それは完全に穴の開いたバケツ、もっといえばザルです。私たちIターン組の移住者にとっても、それは望んでいる事態ではありません。
きっと、「行ってみたい田舎」と「戻りたい・帰りたい田舎」とが、バランスの取れているところほど、強いのではないかと思います。
だって私たちも、地元の人たちが生き生きと自分たちの故郷を愛している姿ほど、この地に生きて励まされることは無いのですから。
そういう意味でも、今回の大多喜町地域おこし協力隊の「大多喜町若者100人インタビュー」のように、地元の人々が大多喜のどんなところを愛しているのかを分析したり、掘り起こしたりすることが大事でしょうね。
そして、そうした思いを次の世代や新移住者が持ってくれるようにするために、「行ってみたい田舎」と「戻りたい・帰りたい田舎」をつくっていく努力こそ、今の地方創世の政策の現場に真に求められることでしょう。
なかなか難しいことは、いすみ市に移住して私も5年が経とうとしていますのでよくわかっているつもりですが、しかし「臭いものには蓋」で、負の遺産を後生に残し続けるだけではあんまりにもひどいので、少しずつでもよくしていけるように日々みんなが考えて実践できるようにしていったらいいと心から思っています。
(良)