星空スペース

【10/29-3/26】川が里山の暮らしの中心にあった時代を知るための最良の展示会がいすみでやってます

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現在いすみ市郷土資料館で開催中の展示会「伝説の中のいすみ~夷隅川をめぐって」のチラシ

こんにちは、星空スペース店長です。

よくこのブログをご覧下さっている方には言わなくてもわかると思いますが、歴史好きです。

そして、今僕は千葉と房総の歴史をいろいろと研究しております。

今の日本史のメインストリームからするとどちらかというと地味な印象のある千葉県なのですが、実際調べてみるとこの国の歴史はなかなか面白いのです。ちょうど日本列島の中間地点にあたり、黒潮と親潮の交錯地点でもある房総半島はある意味日本の縮図的な事柄が郷土史の中に数多く潜んでいます。

今回ご紹介する展示会もそのようなもののひとつです。

以前、「日本には「川」という宝があることを気づく旅のすすめ」という記事の中で、日本の社会・経済の中心にあった河川と水運について書きました。

その河川と地域とのつながりについて、本当にちょうどよい学習機会を提供してくれる場を、なんといすみ市の郷土資料館通称「田園の美術館」がいま提供してくれています。

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いすみ市郷土資料館

この展示会、本当におすすめなので、郷土史に興味がある人も、河川と地域とのつながりを見てみたい人もぜひ行ってみてください。

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チラシ裏面

展示会は二部構成になっており、第1部は静遥(しずはる)さんという画家さんによる夷隅川およびその支流を描いた絵の展示会になっています。まずこれがすごく良い。写真とはまた別に、川と里山の風景が、どのように私たちのそばに流れているのか、主観的にとてもわかりやすい形で切り取られ、把握することができます。

普段、私たちが見過ごしている「川」の持っている表情を、絵というフレームの中に見つけることができます。写真には写しきれない、水面に写る里山の要素が絵から浮かんでくるとても印象的な個展でした。

そして、第2部は夷隅川が夷隅地域においてどのような役割を果たしてきたのか、図解してくれるコーナーが続きます。

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昔の夷隅郡の地図。川の周りに各集落が展開していたのが良くわかる(写真は館員の許可を得て撮影)

この図解と解説の内容が、簡潔にして明晰、本当にすばらしいレベルでした。

きっと準備されていた館員の方が相当入念に今回の企画展に向けて準備されてきたのだと思います。

主題は「夷隅川」となっておりますが、「川」というのは日本全国どこの地域にもあるわけで、そうした「川」の存在が郷土史においてどのような役割を果たしてきたのか、それを展示する方法論としても、全国的に新しいものを示しているのではないかと感じました。

郷土史の研究家はもちろんのこと、川と地域とのつながりに興味のある人にぜひ見てもらいたい展示会です。

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上図と解説のように、いすみ市に多く見られる「堰(せき)」についても、国土地理院の地図データを分析することにより、先人たちがいかに努力して、水田を切り開いていったのか、理解することができます。こういった地図の解析が進めば、郷土の歴史を新しい側面からイメージできるようになるのです。

とにかく、「川」と「水運」は日本の経済活動において長らく動脈として機能していたにもかかわらず、こんにち私たちの生活から「かかわり」自体が極度に少なくなってしまった存在です。

この「川」という存在を見直し、里山における「水」の流れのあるべき姿を私たちが取り戻すときに、私たちの里山が本当の意味で復活するのではないかと私は考えています。

この展示会、なんと無料でみることができます。興味のわいた方はぜひご覧になってみてください。

いすみ市郷土資料館

(良)

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